Sekiro: Shadows Die Twice をクリアしたのでその感想を書く。

fukuro-scene


Background Link to this heading

ゲームは好きですが、死ぬのは嫌いです。 フロムゲームは死にゲーの代名詞として有名ですが、 ずっとやってみたくはありつつも手を出せずにいました。 厳密には、PS4を買ったばかりの大学1年の時にBloodborne を一度やったことがあるのですが、 案の定難しすぎるし、 何よりも雰囲気が鬱すぎてすぐにやめてしまいました。 しかしながら、同様にフロムのタイトルであるArmored Core VI: Fires of Rubicon を去年にプレイしてから、少しフロムゲーへの興味が再燃しました。 まぁACは全然死にゲーではないんですけどね。

というわけで去年の秋頃、SEKIROを買ってみました。 フロムの死にゲーの中でもSEKIROを選んだのは、以下の理由からです:

  • ELDEN RINGを除くと、一番新しい
  • いわゆるソウルライクのようなゲームではなく、フロムゲーの中では異端児のような扱いをされているらしい
  • 雰囲気が他のゲームと違い、日本を舞台にしているし、画面の鬱要素が少なそうに見えた

プレイした直後の感想としては、めちゃくちゃ難しいし、めちゃくちゃ怖いです。 何十回やっても相撲取りみたいな中ボスが倒せなかったし、 なんか周りの家は燃えてるしで、 嫌になって1週間くらいで辞めてしまいました。 それから時は経って2024年の2月。 FF7を1/3くらいやって嫌になって辞めてしまったので次のゲームを探していたところ、 そういえばSEKIROをやりかけていたなぁと思い出し、再開しました。 そこからはもう、一気にハマってしまいました。 本当にこんなに面白いアクションゲームはやったことがないです。 ぼくのゲームランキングの中で一気に2位に躍り出ました(1位はHORIZON・3位はスマブラです)。 戦闘・ゲームシステム・マップ・移動・UI・テキスト・音楽・ストーリー、どれをとっても本当にこの上ないゲームです。 ステマではないです。

1回目のクリアまでの時間が30時間、4周してトロコンするまでの時間が56時間、最終的には67時間プレイして5回クリアしました。 それでもまだ飽きてはいません。 このエントリでは、そんなSEKIROをクリアした感想を書きます。

この上なく面白い戦闘 Link to this heading

正直、SEKIROの面白さの99.999999%が戦闘システムとそこから得られる快感に凝縮されています。 本当に素晴らしいシステムです。 この先これ以上に楽しい戦闘ができるゲームが出てくるとは思えません。 そのくらい楽しいです。

基本システム Link to this heading

SEKIROの戦闘の主体は、弾きです。 他のゲームのジャストガードとかパリィと呼ばれるものです。 敵の攻撃を被弾する直前でガードをすることで、敵の攻撃を弾くことができます。 弾きに成功すると、敵の体幹ゲージが溜まります。 体幹は敵のスタミナ、もしくは「辛いゲージ」と考えてもらえればいいです。 この体幹をMAXまで貯めることで、忍殺というトドメをさすことができます。 敵には体幹の他に体力も存在し、体力は攻撃を当てることで減少しますが、これを0にしても勝利ではありません。 体力は体幹の溜まりやすを上げて回復を遅くする効果しかありません。 つまり極論を言ってしまえば、一切攻撃をせず弾きを成功させ続けさえすれば理論上はどんな敵も倒せるということです。 弾きだけで倒せる(そして、それを意図されている)中ボスもいます。 実際には体力を少しは削らないと体幹がすぐ回復してしまうので弾きだけで倒すことは殆どしませんが、 それだけ弾きというシステムがSEKIROでは重要になっています。

また、敵の攻撃には稀に弾くことができない又は他のカウンターができる技があります:

  • 突き: 弾くこともできるが、前方向にステップすることで相手の武器を踏みつけて体幹を削ることができる
  • 下段: ジャンプで回避できる。回避した後には敵を踏みつけて体幹を削ることができる
  • 掴み: 弾き不可。この技だけは逃げるしか無い

基本の弾き以外に3つの選択肢が加わることで、戦闘における一瞬の判断が重要になります。 敵の攻撃モーションを見切り、適切な防御を選択し、すぐさま攻撃に転じる。 これがSEKIROの戦闘の基本であり、そしてこれがSEKIROの戦闘の全てです。 これ以外に余計なものは一切必要ありません。 厳密には忍具という攻撃アイテムや、忍術という必殺技みたいなのもありますが、 基本的に使わなくてOKです。

responsiveでactiveな戦闘 Link to this heading

SEKIROの戦闘は、responsiveactiveです。

自分は正直JRPGのアクション戦闘があまり好きではありません。 最大の理由が、ガードや回避が直感的ではないところです。 敵が沢山の弾幕を打ってくるものの、 その当たり判定が分かりにくかったり、 回避やガードの性能自体が悪く予めガードしておかないと絶対に避けられないものもあります。 というか、回避やガード自体(又はそのどちらか)が実装されていないゲームもそこそこあります。 あくまでも攻撃がメインで、状況に応じて多様な技を駆使して攻撃することが必要で、 敵の細かい攻撃については当たること前提なゲームがどうも苦手です。 勿論それはそれで技の構成だとかタイミングを考えるのは面白いんですけどね。

一方、SEKIROの戦闘は全ての技を弾く・ガードすることが前提です。 基本的に一切の被弾は許されません。 一発で死ぬ技は殆どありませんが、基本的には攻撃を1発受けるだけで大きな痛手を負うことになります。 それだけ重要なガードは、反応速度がとても良く、且つ弾きに成功したときには小気味よいエフェクトと音がつきます。 とても体験の良いガードです。

前述したように、この弾きは単なる防御ではなく、敵の体幹を削るための攻撃でもあります。 防御が敵の攻撃の単なる待ち時間ではないということです。 基本的に、どのゲームもガードは自分の次の攻撃までの隙間時間になってしまいがちです。 しかし、SEKIROではこの隙間時間が存在せず、常に攻撃の時間であり、常に防御の時間でもあります。 これがSEKIROの戦闘がactiveたる所以です。 また、弾きは成功すると少しだけ敵を怯ませることができる場合があります。 それから、弾きではなく通常のガードになってしまうと逆にこちらが怯んだり、体幹が大きく削られてしまいます。 ガードではなく弾きをすることが前提です。 このスリル・ひりひり感が、防御というアクションに対して非常に良い刺激を与えてくれます。

また、こちらからの攻撃は1発でも当たれば敵は大抵ノックバックします。 これも凄く良いところです。 ゼノブレイド3やFF7RやイースXなどのJRPGでは、 こちらが普通の攻撃を与えても敵はうんともすんとも言いません。 攻撃されてるのに、構わず攻撃を続けてきます。おかしな話です。 これでは攻撃をしているという実感が湧いてきません (念の為注釈しておくと、ゼノブレイド3もイースXもぼくは好きなゲームです。良いゲームです。 とりわけイースXのラスボス戦のシナリオ・状況は最高でした)。 対してSEKIROでは、こちらの攻撃が敵を怯ませることができます。 大抵は1s程度の小さな怯みです。 しかしながら、「攻撃されると、怯む」という当たり前の反応則がSEKIROにはちゃんと存在します (スーパーアーマがある場合や、獣系の敵だと例外なんですが。そういう敵は、ダクソっぽい敵と呼ばれます)。 もちろんこちらが敵の攻撃を食らったり、敵の攻撃を弾けなかったりすると、 吹っ飛んだり怯んだりします。 お互いに、攻撃されたらちゃんとリアクションを取ってくれるということです。 これがSEKIROの戦闘がresponsiveたる所以です。

敵と自分の対称性 Link to this heading

responsiveでactiveな戦闘は、敵と自分の対称性によって成り立っています。 SEKIROでは、主人公ができる攻撃は大抵敵もしてきます。 逆に言うと、基本的に主人公ができることしか基本的に敵はしてきません。 敵も弾きをしてきます。 敵も攻撃されると怯みます。 一部の敵は攻撃を回避してカウンターしてきます。 敵は必殺技を打ってきますが、主人公も打てます。 これらの対象性が、戦闘から理不尽さを取り除いています。 同じルールの上で、真剣勝負をすることができます。

ほとんどいらない回避 Link to this heading

SEKIROには一応ステップ回避がありますが、おまけみたいなものです。 無敵フレームも短く、後スキもあるため基本的に使いません。 弾き前提の戦闘だからこそ、前述したようなresponsiveでactiveな戦闘に繋がるわけです。 折角フロムゲーが好きになったのにELDEN RINGをやるのを躊躇っているのは、 ELDEN RINGの戦闘がSEKIROよりも回避重視になるという噂を聞いたからです。 動画を見ても、敵の攻撃中は敵の周りをコロコロ回避しているようなシーンが多いような気がしています。 それだけSEKIROでは回避ではなく弾きが重要であり、それがSEKIROの戦闘の面白さに繋がっています。

絶妙な難易度設定 Link to this heading

SEKIROの難易度設定は絶妙です。 勿論難しいです。 しかしながら、SEKIROの戦い方さえ覚えれば最終的には必ず勝てるように設計されています。 理不尽さによって難しくするのではなく、正当に難しくしています。 実際、2周目以降は殆ど死ぬことはありませんでした。 2周目以降は敵も強くなるためステータスでゴリ押すということはできませんが、 それでもこれまで積み重ねたプレイヤースキルによって勝てるようになります。

デスペナルティが少ないのも良いです。 死んでもお金と経験値(スキルポイント)が半分になるだけです。 ダークソウルやBloodborneと異なり、失ったお金と経験値は取り戻すことができませんが、大したことではありません。 お金はそこらへんの雑魚を倒せば必要な分だけすぐに得られます。 経験値にレベルが上がった分は失われません。 かなりデスペナは小さいのではないかと思います。 そもそも、SEKIROで得られる経験値の中で最も重要なのは、スキルポイントでもお金でもなく、プレイヤースキルです。 何度も死んで、お金とスキルポイントを失いながらも、 最終的にはプレイヤースキルが成長していくことがSEKIROの醍醐味です。

師たるボスたち Link to this heading

SEKIROは本当に素晴らしいボスたちばかりです。 最も素晴らしいところは、「弾いて、切る」という基本的な戦闘システムしか必要とされない事です。 ゲームのボスというのは往々にして、折角磨き上げてきたこちらの技や経験を封じてくることがあります。 デバフでこちら側を弱くしてきたり、ガード無効・回避無効みたいなチート技を使ってきたり…。 SEKIROには基本的にそんな小賢しいボスはいません。 勿論強いです。 但し、強いけれどもズルくありません。 理不尽抜きで闘うことができます。 ゲームの最序盤から積み重ねてきた基本の基本を、 存分に使うことで倒すことができる。 逆に言うと、基本を使いこなさないと勝てないような設計になっています。 何回も死ぬことにはなりますが、 SEKIROの魅力は負けた理由が分かるということです。 弾くことができなかった、敵の攻撃を見抜けなかった、回復のタイミングを失敗した…。 常に負けた理由は自分にあるということが分かるので、リトライが苦ではありません。

好きなボスランキング Link to this heading

5位: まぼろしお蝶 Link to this heading

最序盤のボスで、恐らく一番最初に闘うことになるという人も多いボス。 自分はこいつの前に居る中ボスのうわばみの重蔵で一度SEKIROを辞めてしまいました。 その後、なんとか重蔵をクリアして登場したこのボスはさくっと倒せたことがとても印象に残っています。 空中を飛んだりクナイを投げたり蹴りをしてきたりと、多少トリッキーな動きこそしているものの、 結局は弾きが全てだということを教えてくれるボスです。

ちなみに、友達にSEKIROをプレゼントしてあげたところ 自分と同じく重蔵で詰まってしまったため、 今なら上手く倒せると思って撮影した重蔵の動画がこちらです。 友達と条件を合わせるために、瓢箪1個+忍具は斧のみにしています。

4位: 破戒僧(幻影) Link to this heading

多分かなり有名なボスです。 弾かせるために存在しています。 攻撃を連続して弾き、フィニッシュに槍を見切る。 とても楽しいボスです。 破戒僧はのちほど幻影じゃないやつがでてきますが、 そちらは2ストック目が落下忍殺でき、 3ストック目はちょっとトリッキーな上に爆竹でハメられてしまうので、 幻影のほうがランクイン。

3位: 柔剣エマ Link to this heading

ラスボスの前座ではあるものの、しっかり楽しいです。 下段・突き・掴みの3つの攻撃を使い分けてくるので、それらに対して適切な防御を選択することが求められます。

2位: 剣聖 葦名一心 Link to this heading

ラスボスです。 100回くらいリトライしました。 最初は全く勝てませんでした。 敗れる度に、「迷えば、敗れる…」と言ってきます。 その通りです。 普通のゲームは敵のセリフなんかうるせ〜〜〜と思うだけですが、 一心のこの言葉は負けた理由を明確に示してくれます。 剣と槍という長さの違う武器を使い分けてくるこのボスは、 一瞬の判断の迷いが敗北に繋がります。 ラスボスなのに、一切の小細工を使ってきません。 最初のボスと基本は一緒です。 それがラスボス足り得るSEKIROは、本当にすごいゲームです。 ただ一つ、なんで一心様が銃を使ってくるのかに関しては、本当に意味が分かりませんでした。

1位: 葦名弦一郎 Link to this heading

もう、言わずもがなです。 全ゲームのボス史上一番良いボスなのではないかと思います。 弦ちゃんは序盤と中盤の間くらいで出てくるボスですが、 ここで「SEKIROの戦闘」を学ぶことができます。 序盤は正しい戦闘というものがよく分かりません。 距離を取ってみたり、回避してみたり、ガードをしてみたり。 そのような闘い方を、弦ちゃんは許しません。 ガードは容赦なく削ってきます。 距離を取ると弓で撃たれます。 こちらから攻撃しないと一方的にジリ貧になります。 とにかく距離を詰めて、攻撃して、敵の攻撃は弾いて、すぐまた攻撃するという戦闘の基本を、 ボス戦を通して存分に教えてくれるボスです。

駆け回れるマップ Link to this heading

SEKIROと他のフロム死にゲーとの違いとして、移動がとてもスピーディーな点があると思います。 そもそもの移動速度に加えて、鉤縄を使って色々なところを飛び移れます。 これによって、周回時には道中の敵を無視して突き進むこともできるようになります。 マップのサイズもちょうど良く、無駄に広すぎないのがとても良いです。

マップ自体が綺麗なこともそうですが、 灯籠の明かりやアイテムなどを通してユーザを自然に誘導してくれているような気がするのも好きなポイントです。 それから、SEKIROはあくまでも戦国ファンタジーなので現実世界の戦国時代に限定されていません。 人ならざるものも出てきますし、地の底みたいな場所も、果ては幻想の世界みたいなところも出てきます。 和をベースにしながらも、飽きが来ないようなマップ構成になっています。

センスあるストーリーとテキスト Link to this heading

ストーリーは、フロムなので詳細は語られません。 大体のことはへ〜そうなんだ〜と受け入れることが前提です。 しかし、キャラクターの描写やテキストが簡潔ながらも芯を捉えていてセンスがあります。 寡黙な主人公の数少ないセリフも、印象に残るものばかりです。

とりわけ、人返りエンドの最後のセリフは本当に好きで、わざわざ英語版も見ました。 英語版だと “I hereby condemn the last immortal. May you live on, and embrace what it means to be human.” になります:

フレーバーテキストの秀逸さについては、こちらの動画を見てください:

アウトロ Link to this heading

めっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃくちゃ良いゲーム!!

次はELDEN RINGに挑戦しようかと思っています。 しないかもしれません。

そういえば、東京で過ごすのはあと数日で終わりです。 引越し準備は全然していません。 明日から本気出します、本当に。